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伝兵衛蔵だより#49

世界を魅了するアート、薩摩の黒もん

生活雑器はいつか美に結実した

2016/02/05

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薩摩焼の古流派のひとつであり、黒薩摩発祥の地である苗代川(なえしろがわ)焼の技術と伝統を今に伝える荒木陶窯の陶工、荒木幹二郎さん。もともと薩摩焼の主流だった重厚かつ野趣あふれる「黒もん」は、苗代川焼系の陶工たちが完成させたもので、江戸時代より続く荒木陶窯は、その代表的な窯元です。70年余りの作陶歴を誇る14代目の荒木さんは、生活雑器としての黒もんのほか、窯固有の天然釉薬を用いた格調高い作品も数多く手がけています。


美山の里に薩摩焼の源流を訪ねる。

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鹿児島市から北西に20数km、東シナ海を臨む景勝地江口浜にほど近い美山は、鹿児島県最大の薩摩焼の産地です。慶長3年に、当時の当主島津義弘が朝鮮より連れ帰った多数の陶工たち。その中の一人だった朴平意が島平(現代のいちき串木野市)から、現在の美山にあたる伊集院郷苗代川に移り住み開窯したことが薩摩焼の始まりだと言われています。以来400年以上に渡って、窯の火は絶えることなく、静かに美山の地で燃え続けています。

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写真左/ろくろを使った制作にこだわり、今も毎日工房に行って、ろくろを回し続ける荒木さん。「陶芸作家として大切なことは、とにかく作ること。作りに作った、対ろくろ時間の多さだけが陶工の誇りであり、証しなんです」写真右/「そもそもモノを作る人間に言葉はいりません。作ったモノ自体が語っている訳ですから。どんなに上手い言葉で飾り立てても無意味、作品自体がすべてを語ってくれる。だから無心にろくろに向かうだけです」

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写真左/黒薩摩は窯の炎や釉薬の調合により、茶褐色や暗緑色などに発色し、古来より「そば釉」と呼ばれていました。荒木さんは約40年に渡る研究の末、そば釉を発展させ、鮮やかな発色の苗代川茶葉末を完成させました。写真右/『土と火の魔術なりけり荒木のや幹二郎がしごとさやかなるかも』。床の間には作家海音寺潮五郎が荒木さんに送った色紙が飾られています。最初の訪問の際の海音寺の言葉「モノを作る者に言葉はいらない」は、その後の荒木さんの座右の銘になっています。

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写真左/土も釉薬も、素材は400年以上変わっていない。ただ作品自体は、決して昔の物真似ではいけない。その思いをいつも失わず、生活雑器を作り続けるうちに美への意識が芽生え、高く評価される作品が次々と生み出されてきました。写真右/荒木陶窯には、平成19年に『端宝単光章』を受賞し『現代の名工』にも選ばれるなど、薩摩焼界の重鎮として名を馳せる荒木幹二郎さんの作品のほか、共に日本工芸会正会員である15代荒木秀樹さんの作品も見ることができます。

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伝統の技と心を受け継ぎながら、それぞれの時代の暮らしに寄り添いながら生み出されてきた用と美。用は黒千代香や徳利、湯のみ、盃など、今も薩摩の人たちの暮らしの中で息づいています。美は荒木さんをはじめとする多くの作家たちの挑戦によって、今や世界的に広く知られ根強いファンたちを獲得しています。実り豊かな木々の囁きに耳を傾け、清流からの風に心を和ませる薩摩焼の里。今度の週末は美山の里で窯元路を散策してみませんか。


Information

荒木陶窯

鹿児島県日置市東市来町美山1571

TEL:099-274-2733

定休日:8/13~15・12/28~1/2

駐車場:有

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