第1話 【串木野と旅人】串木野に一人の旅人が訪れる
私は、無類の焼酎好きである。
とあるブログを見ていたら、
ちょっと気になる焼酎蔵のことが書いてあった。
それは、芋焼酎のふるさと鹿児島にあるという。
東シナ海に面した風光明媚なまち、いちき串木野。
そのブログによると、なかなか味わい深い土地柄で
印象的な歴史や文化や風土が、焼酎を育んでいるらしい。
うまい焼酎との出会いを楽しみに、このまちを旅することにした。
第2話 【羽島(はしま)と夢】薩摩藩士が留学に旅立った串木野 羽島
まずは、羽島という場所を訪ねてみた。
そこでいきなり、驚くべき歴史に出会った。
幕末から明治にかけて活躍した、五代友厚ら19人の薩摩藩留学生。
大志を抱いてヨーロッパに向けて出航したのがこの地だったのです。
はるか昔ではあるけれど、近代日本の礎を築いた彼らは、
間違いなくここにいた。
そう思うと、感動的で心を揺さぶられるものがあるのです。
第3話 【海と宝】歴史や文化も美味しいも育む珠玉の海
古くから、大陸との交流交易を紡いできた東シナ海。
特に夕景が美しく浪漫を感じるこの海は、
実は漁業が盛んで、海の幸の宝庫らしい。
中でもマグロ漁は日本屈指で、現在も基幹産業として活況だ。
漁港の近くで食べた、名産品のマグロラーメンは絶品だった。
また、皆さんご存知のさつま揚げは、なんと串木野が発祥らしい。
工場直売のお店で、本場の味をいただいた。
いつも食べているさつま揚げとは、段違いの美味しさだった。
第4話 【冠岳と霊水】パワースポット冠岳と串木野を潤す伏流水
南九州の古代山岳仏教発祥の地とされる山がある。
今もなお、信仰の山として畏敬の念に堪えない、霊峰 冠岳。
真言密教の地、不老不死の霊草の言い伝えがあるほどの薬草の宝庫、
数多の奇岩や甌穴。この山を歩いていると、凛とした時間とともに、
大きなパワーを感じずにはいられなかった。
そして霊水とされるこの山の伏流水は、
時を超えて串木野のまちを潤し続けているようだ。
この旅の目的地である焼酎蔵も、
きっとその恩恵を受けていることだろう。
第5話 【芋畑と品質】薩摩シラス台地で育った良質なさつまいも
芋焼酎の原料であるさつまいも。
どうやら、いろんな品種があるらしいので、
生産農家さんを訪ねることにした。
広大な芋畑を眺めながら話を聞くと、
鹿児島独特のシラス台地が良質な芋を育むのだという。
そこでひとつ、黄金千貫(こがねせんがん)という芋の話を聞かせてもらった。
名前の通り黄金の皮を纏っていた。
この芋で造った焼酎は、ふわっとした香りやキレ良い甘味が特徴らしい。
その味を想像しながら、いよいよ焼酎蔵へ向かうのであった。
第6話 【海童と傳藏院蔵】革新の蔵から生まれる本格焼酎の最高
そして旅の最終目的地に到着。
ここは、東シナ海から心地よい海風が吹き抜ける傳藏院蔵。
150年以上の歴史がある濵田酒造の三つの蔵の一つ。
伝統を大切に、革新の精神で挑み続ける。
蔵人伝承の技と最新の技術を掛け合わせることで、
常に最高品質の焼酎造りを実現しているという。
この挑戦する姿勢は、羽島から旅立った薩摩藩留学生の志と
通ずるものがあるように思えた。
そして、私が是非とも飲んでみたかったのが、
傳藏院蔵の象徴とも言うべき、海童という本格芋焼酎なのだ。
第7話 【旅人と女性】海童を試飲する旅人とある蔵人
傳藏院蔵をひとしきり見学した後、
創業の蔵伝兵衛蔵に併設されている販売所へ向かった。
そこで嬉しいことに、蔵の人から試飲に誘われた。
いろんな焼酎が並んでいたが、
まず蔵元で飲んでみたかった海童の試飲をお願いした。
すると6種類の海童が登場した。それぞれに個性があり
どれも格別においしかった。
お礼を言おうと蔵の人に目を合わせると
見覚えのある女性だった。なんとあのブログを書いていたOさんだった。
私は、この旅のきっかけがOさんのブログであったことを伝えた。
第8話 【海と夕日の蔵】おいしい焼酎とすてきな出会いに感謝
この旅の思い出にと、Oさんはとっておきの場所を教えてくれた。
時は夕刻、そこには幻想的な景色が広がっていた。
東シナ海に沈んでゆく夕日と傳藏院蔵が魅せる感動的な時間。
本格芋焼酎 海童のふるさと、鹿児島いちき串木野。
おいしい焼酎で酔わせてくれてありがとう。
すてきな出会いで酔わせてくれてありがとう。
私は、無類の焼酎好きである。