本格焼酎の未来を、
明るくする酒を。
濵田酒造が創業150周年へ
向けて開発を進め、
2018年9月に「未踏の香り」を
コンセプトとして誕生した
本格芋焼酎だいやめ。
発売から5年以上たった今でも、
年齢を問わず好まれる香りと味を
届けるために進化を続けている。
そんなだいやめについて、
商品開発担当者に話を聞いた。
プロフィール
だいやめを生み出した商品開発研究室の立ち上げメンバーのひとり。子どもの頃から自然に触れることが好きで農学部へ進み、さつまいもの研究を行っていたことがきっかけで濵田酒造へ入社。25年以上にわたり、さまざまな商品につながる研究と開発に携わってきた。趣味はハイキング。鹿児島の出水に渡来するツルを見に行くのが、最近の楽しみ。また、お酒好きであることを活かし、休日は商品開発の情報収集も兼ねて酒屋巡りをしている。
だいやめ開発当初は、製造補助として携わる。現在は研究開発の主担当として“香熟芋”の熟成技術の改良に取り組み、さらなる安定供給を目指す。大学時代は微生物を研究し、発酵食品のなかでも免許が必要となる酒造りを経験したいと濵田酒造へ。焼酎を初めて飲む人向けの商品を開発するときは、香りだけで美味しそうと感じてもらうことを大切にしている。オフの楽しみは、子どもが昼寝をしているときに見るアニメやドラマ。
これまでは抑えてきた、
ライチのような香り。
これからの本格焼酎業界を担い、若い人にも受け入れられるこれまでにない酒を造りたい。そう考え、だいやめの開発は始まった。注目したのは、香りだった。
「だいやめのライチのような香りは麦や米には含まれていない、さつまいもの特徴香です。
この香り、じつは30年前から存在が知られていました。でも、従来の芋焼酎としてはあまり好まれる香りではないと業界内では認識されており、これまでは抑えてきました」(原)。
一方で、原自身はこの香りについて面白いと感じており、10数年前から研究を始めていた。
魅力を引き立てる、
濵田酒造の知見。
特徴香と言っても、収穫後すぐのさつまいもに含まれるライチのような香りの成分は決して多くない。そこで濵田酒造の知見を活かし、独自の熟成法で香りを増強・増幅させた“香熟芋”にしている。
「現在も研究を重ねていますが、熟成させるとライチのような香りが強くなることは分かっていました。そのなかで、香りをどこまで引き立たせるのかについては検討を重ねましたね。飲んだときに特徴を鮮明に感じてもらって印象に残るものでないと、数多くある酒のなかに埋没してしまいます。もちろん、ただ香りが強ければ良いのではなく、食事にも合って長い間にわたり好んでいただけるようにバランスも重要でした」(原)。
困難であっても
新しい焼酎を造るために。
だいやめは“香熟芋”の他にも、「未踏の香り」を実現するために数多くの工夫を凝らしている。
「試行錯誤するなかで黒麹を使うことを決め、発酵もこれまでにないこだわりを持って行っています。蒸留方法も芋焼酎で一般的な常圧蒸留ではなく、“香熟芋”の特徴やもろみのフルーティさを引き出すため、麦や米焼酎で用いられる減圧蒸留です。芋焼酎のもろみは、麦や米と比べて仕込み水の割合が少ないために粘性が高く、加熱時に焦げやすくて減圧蒸留は技術的に難しいんです。さらに蒸留時も一般的な焼酎に比べて原酒として抽出する範囲を限定し、より良い香りを追求しています」(原)。
こうして造られた原酒がブレンダーの手にわたり、今の香りを造りあげるまでには100パターン以上の試作が行われた。
世界で
自分たちしか知らない
“香熟芋”。
そんなだいやめの研究開発に携わる面白さを白石はこう語る。
「研究するときは、さまざまな論文を読みます。でも、世の中に“香熟芋”についての論文はありません。自分が同僚たちと協力して見つけたことは、世界中で自分たちしか知らない。誰も知らないことを真っ先に知れるというのは、やはり大きなやりがいですね。また、だいやめの造り方は、発売当初から改良を重ねています。そこにとても近い距離で携わり続けることができているのは、自分の成長にもつながっているという実感があります」(白石)。
一生懸命やると、
良い酒になる。
白石の話に笑顔で頷きながら、原は自身についてこう語る。
「今まで分からなかったことを研究して試して、良い焼酎ができあがって、お客さんが喜んでくれたら嬉しいんです。酒造りは非常に難しくて、いろいろと考えてやるけど思った通りにはなりません。蒸留も未だ解明できていない世界。酒ができてみないと分からないことが多い。でも、このコントロールできないところが面白い、永久にいろんなことができます。あと、一生懸命やると良い酒になる。それは間違いない。自分がやったぶんだけ、かえってくるんですよ」 (原)。
だいやめを育てながら、
さらなる未来を描く。
今、だいやめの課題は、世の中の期待にこたえ続けることだ。
「品質を落とさずに生産量を増やせる方法を、常に試行錯誤しています。“香熟芋”にするのに適した芋を確保するのもだんだんと難しくなっているんです」(白石)。
また、同時に原と白石は“第二のだいやめ”を造ることにも挑んでいる。
「若い人からも海外からも評価されているだいやめの存在は濵田酒造にとって、とてつもなく大きいものです。そんなだいやめを超える酒を造れないか、難しいですが研究中です。これまでの経験が自分の視野を狭くさせないように、考えを変えて新しい焼酎を造っていきたいと思います」(原)。
まだまだ途中。
これから焼酎はもっと
愛されるものへ。