神無月、本格的な芋焼酎づくりのシーズンがやってきました。芋焼酎にとって大切なのは「米麹」と「芋」。でんぷん質が豊富な鹿児島県産芋の『黄金千貫』、伝統製法による『黄麹』や『黒麹』を原料に「甕仕込み」、「木桶蒸留」によって、華やかでまろやかな焼酎の味わいに仕上げる蔵人・杜氏(とうじ)。卓越した技術をもって、創業時からの「味・技・心」を守り続ける伝兵衛蔵の杜氏の仕事について少しご紹介しましょう。
杜氏は蔵の最高責任者。
焼酎づくりのスタートとなる”麹づくり”。原料となる米を洗い、吸水させ、蒸すことで、米を”麹づくり”に適した状態にします。蒸しあがった米は放冷台と呼ばれる台の上で40℃程度まで冷まします。その後、麹菌を繁殖させた種麹を振りかけていきます。杜氏は、蒸米の温度や湿度、質感を手で確かめ、種麹をどの段階で混ぜていくかなど、豊かな経験から判断します。
出来上がった「米麹」に仕込み水を混ぜ、酵母の力を借りて一次仕込みを行います。さらに二次仕込みへと。年月を積み重ねてきた蔵の中には、数多くの仕込み用の大甕があります。大変昔のものなので大きさも不揃い。気温や湿度も刻々と変化していきますので、仕込み中は昼夜を問わず麹やもろみの状態を管理します。さらにおいしい焼酎をつくるために徹底した現場の管理を行う蔵の最高責任者。それが杜氏です。
生きている麹や酵母を扱うため、同じ味を造り出すのは難しいと言われる酒造り。焼酎づくりでも同じことが言えます。焼酎造りの工程は、大きく分けて5つ。麹づくり、一次仕込み、二次仕込み、蒸留、貯蔵。伝兵衛蔵では、手作業で、甕仕込み、木桶蒸留、甕貯蔵を行っており、タンク仕込みでは引き出せない独特の風味が宿ります。
醪(もろみ)が発する華やかでやさしい香り。生命力が漂う蔵の中で杜氏たちは、おいしい焼酎を育てるために微生物たちが働きやすい環境を整えています。そうした微生物たちとの対話こそが、実は杜氏の本当の仕事なのかもしれません。五感を研ぎ澄まして、さらにおいしい焼酎を育てる。醸造と蒸留のスぺシャリストによって、伝兵衛蔵の焼酎は守られています。