「世界に数ある蒸留酒の中でも、本格焼酎はもっともおいしく食中に飲める蒸留酒だと思います。25%でもいいし、お湯割りや水割りなど好みに合わせて割って飲めるのも素晴らしいところかな」と話して下さったのは、伝兵衛蔵杜氏の原健二郎さん。濵田酒造に入社して27年、長年焼酎の開発に関わってきました。普段から焼酎に親しみ、「最近は健康を考えて、週に1回は休肝日にしています。70歳、80歳になっても、おいしくお酒を飲みたいですから」という原さん。普段はお湯割りを飲むことが多いものの「消費者目線で焼酎を見ないといけないですから、お湯割りばかりでなく、炭酸割り、水割り、ロックなども試しています」。
明治時代から伝わる伝統的な造り方にこだわった「伝」
「傳蔵院蔵」「金山蔵」そして「伝兵衛蔵」。現在、鹿児島県いちき串木野市内にある三つの蔵で焼酎造りを行っている濵田酒造ですが、ここ「伝兵衛蔵」では、創業当時の明治時代から伝わる甕仕込み、木桶蒸留、甕貯蔵と伝統的な製法にこだわる焼酎が多くあります。その一つが今回紹介する「伝」です。「寒い季節は温まるお湯割りがやっぱりいいですね。通常のお湯割りは5:5で飲むことが多いですが、『伝』はすっきりしているけれど味わいがちゃんとあるので、焼酎1:お湯2の薄めで飲んでもおいしいですよ」と原さん。
「豚肉を使ったお鍋」「白身魚の刺身」そして「干し芋」⁉
黄麹独特のフルーティーな香り、芋の旨味と深みを感じられる「伝」に合わせる料理を伺うと、「お湯割りに合わせるなら、やっぱり豚肉料理。豚肉の脂の甘みに『伝』は合うんじゃないかな。ニンニクと醤油がベースになったもつ鍋のスープに、たくさんの豚肉と、もやし、キノコ類、豆腐などたくさんの野菜や具材を入れたものは、お酒がすすみますよ」と原さん。「水割りに合わせるなら、白身魚のお刺身がいいですね。刺身の美味しさを邪魔せず、さっぱりと味わえます。白身魚だけでなく、ブリやカンパチもいいですね。最近年齢のせいか、刺身の美味しさが分かるようになりました(笑)」。
そして食後酒としてロックで甘いものとともに味わってもいい、ということで原さんがおすすめしたのが、なんと干し芋とのペアリング。「同じサツマイモを材料にして造られる、芋焼酎と干し芋。サツマイモはおいしいだけでなく、食物繊維やミネラルが豊富で栄養価も高いんです。お土産用だけでなく、最近は100円ショップなどでもおいしくて品質の確かな干し芋が並ぶようになったので、よく購入しています」。焼酎と干し芋のマリアージュは初耳でしたが、新たな飲み方として試してみたくなりました。
まだまだ寒い季節は続きますが、夏場でもお湯割りを飲むことが多い原さんから、夏でも美味しいお湯割りの作り方を教えていただきました。「夏はなかなかお湯が冷えませんから、沸かしたものを1,2度コップに移し替えて、70℃くらいにしてから、20℃くらいの焼酎と割るとぬるめのお湯割りになり、芋のふくよかな甘さや芋のやわらかい香りがたっておいしいお湯割りができると思います」。