香りが届ける個性。それは焼酎だけにとどまらず注目が集まっています。
話題になることも多い、お酒と香りの関係。味わいや個性を語るうえで、香りの要素は非常に重要です。焼酎を例にあげれば、芋の品種、麹の種類、醸造・蒸留の工程、さらに貯蔵・樽や甕を使った熟成などの工程を重ねることで、その銘柄独特の香りが生まれます。
香りの持つ効能にはいろいろと研究がされています。難しく考えなくても、私達の生活のなかでも、香りをかぐと何か思いだすエピソードもありますし、香りと人間の生活は切っても切り離せないものだと思います。
サワーポメロの摘果された青い実からフレグランスが生み出されたその背景
この香りの分野で、いま鹿児島で注目されているのが「ル シエル フュゼ」代表の久木田紫絵留さんです。
いちき串木野市に店舗を構え、地元の特産品を使ったオリジナルアロマ製品の企画、開発、製造、販売を行っています。そのきっかけとなったのが、いちき串木野市の特産品でもある「サワーポメロ」でした。
小学生のころからハーブや香りが好きだった久木田さん。中学1年生の時に柑橘を栽培する農家の間引き作業を見て、廃棄される青い実から、黄色く熟したものよりもフレッシュで強い香りを放つことに気づき、この香りを取り出すことを思い立ちます。
アロマテラピーアドバイザーという資格を小学生で取得していた久木田さん。青いサワーポメロの皮から精油を抽出することに成功し、フレグランスへと仕上げました。そして、紅茶好きでブレンドティーを作っていた母の政子さんが出店したマルシェの片隅で、サワーポメロのフレグランスを出品したところ、地元の行政の方の目に留まり、いちき串木野市のふるさと納税の返礼品に選ばれたことから、本格的に製造がスタートしました。
「サワーポメロは、爽やかな風味と少し甘みのある香りが特徴です。私が面白いなって思うのは、フレグランスなどの商品を手に取ってくださるお客様が、サワーポメロを食べているみたいっていう感想をおっしゃることですね」。少し厚めの皮をむいた時に感じる、爽やかさの後ろにあるほのかな個性までもが鮮やかに広がります。
特産品を世界へ、さらにその先へ。鹿児島の魅力を香りにして発信
インタビューに伺った9月上旬は、柑橘農家の農園で摘果された実をコンテナいっぱいに集める作業と精油を抽出するために、果物の皮をむく作業に追われて忙しい時期。本来であれば廃棄されてしまうものから香りという素材に着目し、魅力を十二分に引き出して新たな価値を加えるという背景も含めて、いちき串木野市の魅力を伝えている久木田さん。シンガポールの無印良品でも販売されるなど、国内外からの注目度も上昇中です。
現在、屋久杉の端材、タンカンジュースを製造する際に廃棄される果皮、平川動物公園のコアラ舎で食べ残されたユーカリなど、鹿児島にとってなじみ深い素材をもとに、次の商品開発を進めています。
持続可能な未来を築くために世界中で取り組まれているSDGsとも合致する考え方の先に描いているのは「宇宙に香りを届けたい」という目標。フランス語でロケットという意味の「フュゼFusée」を店名に掲げている通り、夢は大きく飛び立とうとしています。
同じくいちき串木野市の特産品でもある焼酎。今日は気分を変えて、サワーポメロのルームフレグランスを漂わせた部屋でグラスを傾けてみるのはいかがでしょうか?
■合同会社 Le Ciel Fusée
ホームページはこちら
■伝兵衛蔵の焼酎購入はこちらから