杜氏が何やら真剣な面持ちで見つめる先にあるものは…そう、答えはもろみです。でも伝兵衛のもろみは、ただのもろみではありません。このもろみはかめ壺に入れて発酵・貯蔵しているんです。「かめ仕込みの焼酎」と聞くと、何だかおいしそうでしょ? 実際にとってもおいしいのですが、じゃあなぜかめで仕込むと焼酎はおいしくなるのでしょうか?今日はこの『かめ』と焼酎のおいしい関係についてお話しします。
『かめ仕込み』には理由があった!
このもろみは、二次もろみです。水に麹と焼酎酵母を混ぜ、発酵させた一次もろみに、蒸して玉砕した芋を加えてさらに発酵させたものなんですよ。発酵が進んでもろみの温度が上がり過ぎると酵母が死んでしまい、焼酎は造れません。だから杜氏は、櫂棒でかき混ぜることで温度を調整するんですね。
「プツプツプツッ…」かめの中から音が聞こえてきますよ。この音こそ酵母が元気に育っている証! かめの中は、酵母にとって最適な環境なんですよ。ではそもそも『かめ』って何?『亀』? いえいえ、『甕』です。かめは、丸く大きな形をした焼物ですが、焼酎造りによく使われるのは『南蛮甕』というかめ。
今はステンレスのタンクで発酵・貯蔵するのが当たり前ですが、ステンレスがなかった時代は、木桶やかめで焼酎を造っていました。かめはこうして地中に埋められています。地中の温度は低音で一定しているから、自然に温度管理ができちゃうんです! ね、すごいでしょ? でもかめの力はそれだけじゃありません。
この独特のまぁるいフォルムのおかげで、焼酎が発酵するときに自然に対流を起こしてくれるので、よりナチュラルな状態で発酵させることができるんですよ。ということは、違う形のかめで仕込むと、焼酎の味わいも変わってしまうってこと。壊れたからといって、新しいかめに替えることはできないんですね。
だから、杜氏はかめを壊さないように大切に扱っています。発酵や熟成が終わったあとも、かめをきれいに掃除したりヒビが入っていないか点検したり、かめ仕込みってとっても手間がかかるんです。
さて、焼酎の熟成が進んできました。いよいよ焼酎の完成も間近! ここで再びかめのパワーが発揮されちゃいます。かめには無数の気孔があり、そこから空気を吸収することでまろやかな味わいになると言われているんです。
一説には、「遠赤外線効果や、かめから溶け出す無機物の触媒効果で熟成が促進される」のです。かめ仕込みにはそんな理由があるんです! こうしたかめのパワーを「伝」を飲んで実感してみてくださいね。