いちき串木野市では、月遅れの七夕である新暦8月7日に近い日曜日に市来大里地区で『七夕踊』が開催されます。七夕踊は約400年前に、島津義弘公の朝鮮の役での活躍を称えて踊られたのが始まりと伝えられています。様々な神や、先祖の御霊に踊りを奉納することで、豊作を願う壮大なお祭りです。約300年間もの間、厳しい戒律を守りながら踊り続けられた七夕踊は、国指定重要無形民俗文化財に指定されています。
おりひめもひこぼしも登場しない七夕。
市来の七夕踊は、太鼓踊りと巨大な動物張り子のパレードで構成されます。太鼓踊りは、全員が花笠を被り、ゆったりとしたリズムの歌で踊ります。行列には、鹿・虎・牛・鶴の巨大な張り子(ツクイモン)と、バレンを持った大名行列・琉球人踊り・薙刀踊りが続きます。七夕踊はお盆に続く先祖供養の行事、祖先を畏敬する御霊信仰と、作物の豊穣を願い害虫退散を願う虫追い(虫送り)習俗が融合した鹿児島を代表する伝統芸能です。
七夕踊の行列では、まず造り物(ツクイモン)と呼ばれる4種類(鹿・虎・牛・鶴)の巨大な張り子が先導します。鹿は、鉄砲を持った鹿捕り3人と登場。倒されては起き上がる鹿と鹿捕りとの問答に注目。虎は4人の虎狩りと登場。ゆらゆらと自在に動く頭を目がけて、虎狩り役が棒を突くドラマを展開。前後に牛使いがいる巨大な牛は、逆立ちが圧巻。口に稲穂をくわえた鶴は、他のツクイモンに比べて人なつこく、子どもたちにも大人気。
張り子のツクイモンの後ろには、大名行列、琉球王行列、薙刀行列の3種類の行列物が続きます。大名行列は「下に、下に」という先払いや、バレンを回す奴などが続き、参勤交代の模様を表現。琉球王行列は、島津義弘公に謁見するため訪れた琉球人の踊りをユーモラスに表現しながら進行。その後に薙刀行列が続きます。本踊りとなる全員が花笠を被る「太鼓踊り」は、鉦・入れ鼓・平太鼓からなり、古風で荘厳な雰囲気。賑やかなツクイモンの行列と対照的で、七夕踊のクライマックスを飾ります。
巨大な張り子のツクイモンたちの壮大でユーモラスなドラマ。薩摩の歴史をダイジェストで見せてくれる三つの行列。そして、荘厳で美しい本踊り。串木野大里地区の住民300人から400人が全員参加する日本でも珍しい古典芸能の祭り、七夕踊。出身者は、必ず一度は太鼓を打たなければならないと言われ、県外に出た者も毎年この踊りに参加する為に帰省します。厳しい戒律のもと、約300年もの間踊りつづけられた国指定重要無形民俗文化財の踊りをこれからも大切に見守り続けたいと思います。
Information
七夕踊
開催日 : 平成27年8月9日(日)
場所 : 大里地域
アクセス : JR鹿児島本線「市来駅」より、タクシーで約10分
TEL : 0996-21-5128(いちき串木野社会教育課)