「キエーイ!」と大声をあげて打棒を一心不乱に振り下ろす男性。一体何をしているのでしょう?
豪快でシンプルな剣術に秘められた普遍的な教え
これは薩摩に伝わる古武道『自顕流』の稽古をしているところなんです。今回私たちがお邪魔したのは『野太刀自顕流研修会』の稽古。幅広い世代の人が集まって稽古をするのが、自顕流の習わしなんですよ。ちなみに『自顕流』というのは通称で、『野太刀自顕流』というのが正式名称なんだそうです。
見てください、この気迫に満ちた表情を! 掛け声の大きさとその迫力に圧倒されっぱなしです。それもそのはず、自顕流には「地軸の底まで叩き斬る」という教えがあるんです。これは「いい加減に途中でやめないで、最後まで叩き斬る」ということ。手抜きや手加減は一切ナシ! 常に全力を尽くすんですね。
自顕流って豪快でシンプルな剣術なんですね! でもシンプルなものほど奥が深いとも言われています。実は自顕流は『門外不出の薩摩の兵法』とされてきたんです。かつては技が漏れないように庭で人に隠れて稽古をしていたというし、今でもこの『続け打ち』という稽古では、技が漏れないようについた足跡を消さなくてはならないそうです。
そして自顕流の究極の教えは「刀は抜くべからざるもの」。無益な殺生を戒めつつ、危急の際は迷わず打つ。これぞ剣術の極意! シンプルで豪快、かつ礼儀を守り優しい心を持つ。自顕流の教えは薩摩の古き良き男性像そのものです。いつの時代も人として守るべき大切なことを、自顕流は教えてくれます。
Information
取材協力:野太刀自顕流研修会
鹿児島市上之園町20−17 共研舎