江戸に、昭和に、随時アクセス可能な町がある

薩摩の小京都は平和を考える町でもある

南九州市は薩摩半島の南部にあり、鹿児島市の南西約40kmに位置します。南は東シナ海を臨み、東は指宿市、西は枕崎市・南さつま市と接して、南薩地域の地理的中心地に位置しています（平成19年12月に、知覧町、川辺町、頴娃町が合併し南九州市に）。なかでも、その中心にある知覧は薩摩の小京都と呼ばれ、麓地区にある武家屋敷群は国の「重要伝統的建物群保存地区」に選定され、その中の７庭園は国の「名勝」に指定されています。

町全体が美しい箱庭を形成する武家屋敷群。

徳川幕府が一国一城制を厳守させた時代、４人に１人と武士層が極端に多かった薩摩藩では113もの外城を置いて、防備を兼ねた城塁型の武家屋敷群を造りました。知覧はその中でも、「人をもって城となす」という軍事行政上の拠点でした。京の庭師に造らせたとも伝えられている庭園は、名勝母ヶ岳の優雅な山容を借景に取り入れたものが多く、そもそも麓地区一帯が箱庭のように庭園化された美しい町並みになっています。写真の森重堅庭園は、その中でも代表的な庭園です。

古民家をそのままアレンジした和風の外観。中に広がるのは店主のセンスが溢れたお洒落なカフェ空間。知覧武家屋敷群の中に佇む「カフェ・デ・ホ」は、何よりも計算された無造作で佇む、店主自らが丹精を込めたイングリッシュ・ガーデンが見事。通常のカフェメニューのほか、ランチにぴったりのベーグルセットなども評判です。高い天井の開放感いっぱいの店内で、時間を気にせずゆったりとした時間を楽しみましょう。

また、知覧にはこんな所もあるんです。大東亜戦争（太平洋戦争）の末期、沖縄決戦において、特攻という人類史上類のない作戦で、爆弾を搭載した飛行機もろとも敵艦に体当たりしたうら若き特攻隊員の関係資料が多数展示される『知覧特攻平和会館』です。今日の平和な日本があることに感謝し、再び日本に特攻隊をつくってはいけないという思いで、ご遺族たちの協力のもと集められた貴重な遺品や資料の数々。平和の尊さとありがたさ、戦争のむごさ、無益さについて、もう一度深く考えたくなります。

『知覧特攻平和会館』に隣接する『ミュージアム知覧（南九州市立博物館）は、「交錯する文化の波」をテーマに、海流に乗り、山野を越えて、薩摩の南、知覧の地にもたらされた様々な文化や習俗を展示しています。海洋民族たちが使用した船舶や、農民たちに豊穣を願って祀られた神たち。未来へ向かうために、もう一度自分たちが歩いて来た道のりを振り返ること。かくれ念仏など、ここでしか出会えない展示もたくさんあり、いつまでも見飽きない美術館です。

薩摩の小京都と呼ばれ、箱庭のように美しい町並みが続く麓地区の武家屋敷群。全国で最も早く新茶を出荷する、どこまでも続く緑の茶畑。平和の価値に感謝し、失われた若い命に姿勢を正す知覧特攻平和会館。人々の歩いてきた歴史や文化が詰まったミュージアム知覧。多種多様の魅力が織り成して興味が尽きない知覧の町。週末の１日、過ぎ去りし薩摩の日々にタイムスリップしませんか？