8月24日午後7時29分、国際宇宙ステーションのロボットアームにより、『こうのとり』5号機(HTV5)のキャプチャ、結合が完了。今、世界でも大きな注目を集めている日本の宇宙開発。その歩みを支え続けた日本の宇宙開発の父、糸川英夫博士によって見出され、建設されたロケット基地が鹿児島の南端内之浦にある宇宙航空研究開発機構内之浦宇宙空間観測所(USC)です。太平洋を見下ろす山頂にあるUSCは、現代科学の粋を集めたロケット基地で1970年の国産第1号科学衛星「おおすみ」をはじめ、数々のロケットや人工衛星・探査機が打ち上げられています。
宇宙開発の未来は鹿児島から発射された。
USCの東端にある大型ロケット発射場M(ミュー)センターは、ロケットを打ち上げる発射装置、ロケットを整備する組立室 、衛星を整備するクリーンルームなど、打ち上げに必要な各種の建屋があります。搭載される衛星は、クリーンルーム内で入念なチェックを受けた後、衛星とロケットを組み付けるクリーンブースで最終段モータと結合し、最後にノーズフェアリングを組み付け、頭胴部運搬台車でM型ロケット発射装置へと運ばれるのだそう。ここから宇宙へとロケットが飛んでいくと思うと見ているだけでドキドキします。
とても大きなアンテナが設置されており、その眺めも圧巻です。ロケットで打ち上げられた科学衛星や探査機から送られてくる微弱な電波は、このレーダテレメータセンターの大きな主反射鏡で受け、いったんアンテナの中央上部にある副反射鏡に集められます。さらに電波は、真ん中にある大きな穴の中へ…。この後、電波は元の信号に戻すため受信設備に送られ、処理された信号(データ)は、コンピューターにより科学衛星・探査機の担当部署に配信されます。また、衛星や遠く離れた探査機への指令信号などの送信電波は、受信信号とは逆のルートで送られるのだそう。
写真左/1970年2月11に日本で初めて(世界では4番目)、この観測所から人工衛星『おおすみ』が打上げられました。多くの困難を乗り越えて、人工衛星の打ち上げを成功に導いた技術者の先輩を称えるため、実物大の『おおすみ』の碑がここに建立されています。写真右/また、功労者の代表であり、ペンシルロケットに始まる日本の宇宙開発の父である糸川英夫博士を称える銅像が、全国からの支援により2012年11月11日に建立され、『おおすみ』の碑と並んでいます。
写真左/施設の入口に設置された宇宙科学資料館では、ロケットや科学衛星、打ち上げ施設設備、科学観測機器などのパネルやモデル、実際に使用された試作・試験品 などが展示されています。写真右/天文学や惑星探査のミッションに数々の貢献をした多段式のロケットとしては、世界最大級、かつ最高の性能を誇るM-Vロケットの発射シミュレーションを、実際に稼働する模型で体験できるんです。
USCの基地内は見学可能で、発射台や巨大なパラボラアンテナなどさまざまな施設をドライブスルー方式で見ることができます。当初は、東京大学生産技術研究所付属施設として開所され、文部省宇宙科学研究所(ISAS)付属の研究施設となり、更に発展して現在の組織に至ったUSC。近年は、小惑星探査機『はやぶさ』やイプシロンロケットの打ち上げ成功で、また注目が集まっています。1779年、薩摩藩第9代藩主・島津重豪が天文・暦学研究、暦編纂のため天文観測所『明時館』を現在の天文館に設置、いち早く宇宙を視野に定めた薩摩藩。その進取の志は、ここUSCで大輪の花を咲かせています。
Information
宇宙航空研究開発機構
内之浦宇宙空間観測所
鹿児島県肝属郡肝付町南方1791-13
TEL: 050-3362-3111