令和元年5月20日に鹿児島県いちき串木野市内5か所が「日本遺産」に認定され、その中のひとつに薩摩金山蔵(串木野鉱山)が入りました。さて、近年耳にする機会が増えた「日本遺産(Japan Heritage)」ですが、「世界遺産(World Heritage)」との違いは何でしょうか。
日本ユネスコ協会連盟HPには以下のように記載されています。
「世界遺産とは、地球の生成と人類の歴史によって生み出され、過去から現在へと引き継がれてきたかけがえのない宝物です。現在を生きる世界中の人びとが過去から引継ぎ、未来へと伝えていかなければならない人類共通の遺産です。創設は1972年。対象は有形の不動産」。
そして、「日本遺産」については、文化庁のHPに以下のように説明されています。
「文化庁では, 地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産」として認定し, ストーリーを語る上で不可欠な魅力ある有形・無形の様々な文化財群を総合的に活用する取組を支援します。世界遺産登録や文化財指定は, いずれも登録・指定される文化財(文化遺産)の価値付けを行い, 保護を担保することを目的とするものです。一方で日本遺産は, 既存の文化財の価値付けや保全のための新たな規制を図ることを目的としたものではなく, 地域に点在する遺産を「面」として活用し, 発信することで, 地域活性化を図ることを目的としている点に違いがあります」。
いちき串木野市で「日本遺産」に認定されたのは以下の5か所です。
【串木野麓(くしきのふもと)】
薩摩藩独特の地域行政制度であった外城制(とじょうせい)の下、串木野城(山城)を中心として置かれたのが串木野麓です。現在も美しい武家門を残した武家屋敷(旧入来邸、現奥田家)や、江戸幕末から明治期に造られた石管水道管や、地頭仮屋跡の石垣などが遺されています。また、国道整備や鉄道施設、串木野港の整備などにも尽力し鹿児島本線開通の功績がある衆議院議長や、文部大臣を歴任した長谷場純孝は祖父の代から西郷隆盛と親交があり、西郷本人も串木野麓を何度も訪れており、そのことから麓地区には西郷直筆の書など明治維新関連の資料が数多く遺されています。
【串木野城跡(くしきのじょうあと)】
串木野城は天然の地形を利用した山城です。串木野麓の中心にある串木野城跡(通称亀ヶ城)のほか、現在も地名として残る浜ヶ城・坂下栫城(さかのしたかこいじょう)が串木野城の出城であったと考えられます。鎌倉期の1215年から1220年頃、串木野三郎忠道によって築城され、串木野氏が島津氏に敗走した1342年頃から島津氏の所領になりました。戦国末期の元亀元年(1570年)2月、串木野城には猛将として知られる島津家久が領主として居城しました。また、この年の6月には家久の嫡男であり慶長5年(1600年)9月、関ケ原の戦いにて「島津の退け口」として有名な撤退戦時に、伯父島津義弘の身代わりとなり(捨て奸)戦場で散った島津豊久もここで産声をあげたとされています。
【地頭仮屋跡(じとうかりやあと)】
東西にわたる地頭仮屋跡の壁面は串木野城外曲輪の一部を利用して造られており、現在遺されている石垣は明治30年前後に築かれました。地頭仮屋を中心として西之□・内村・麓・原郷の四つの郷があり「麓四郷」と呼ばれています。島津重豪の積極開化政策で、安永二年(1773年)鹿児島城下に造士館と演武館を創設しました。串木野麓でも間もなく当地頭仮屋屋敷に手習い学問所と剣術稽古所が創設され、明治2年最後の地頭となった坂木六郎は、ここに「達徳館」を設け新時代の教育の基礎を築きました。これが鹿児島県第三十四郷校となり、現在の串木野小学校へと進展しました。
【旧入来邸武家屋敷(きゅういりきていぶけやしき)】
江戸幕末期の武家屋敷。武家門を備え切り石の石垣、玉石積みの石垣、2つの石垣に敷地を囲まれています。(切り石の石垣は明治28年末から29年にかけて建造されました。)木造平屋建て入母屋造桟瓦葺の邸宅は、建具や天井、欄間などに意匠をみせる大規模近代和風住宅です。庭木として植えられている犬槙(イヌマキ)および五葉松(ゴヨウマツ)の古木は樹齢300年を越えるとも言われ、邸宅と併せ市の指定文化財に指定されています。
【串木野金山】
明治維新を牽引する薩摩藩の大切な財源であった串木野金山。1904年(明治37年)に建てられた事務所の建物は、現在鹿児島市磯の仙厳園と尚古集成館近くに移設されスターバックスコーヒー鹿児島仙厳園店として利用されています。串木野金山は現在でも三井串木野鉱山㈱によって金の一部採掘や精錬などを行っており、金総採掘量は全国4位を誇ります。また坑洞の一部は、2005年にトロッコ列車に乗って坑洞内の蔵や串木野金山に関する展示物を見学できる「焼酎蔵 薩摩金山蔵」として生まれ変わり、鹿児島県を代表する人気スポットになっています。
日本遺産の地に足を踏み入れると、その地域の歴史的魅力や特色を通じて、日本の文化・伝統を語るストーリーに触れることができます。この夏の旅行で鹿児島方面を計画予定の方は、日本遺産巡りをしてみてはいかがでしょうか。新たな日本の魅力に出合えるかもしれません。
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