世界の国々では、古来より様々な形の「お守り」が人々の生活の中に存在しています。私たちが住む島国日本でも、人々の願いを象った縁起物として、厄除け(魔除け)、招福(開運、幸運)、加護などがあります。最近では、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症に関する情報ページに、事態の収束を願い、妖怪「アマビエ」なるものが登場し、編みぐるみや、漫画、菓子類などに姿を変え、日本人の不安な心に希望の光を灯す「お守り」的存在となりつつあります。今回の蔵だよりは、人の心に寄り添い続ける「お守り」について書いてみたいと思います。
(京都大学附属図書館所蔵の「アマビエ」資料)
「お守り」の起源
「お守り」の起源については、縄文時代の人々が魔除けとして勾玉を身につけていたのが始まりとする説や、6世紀ごろに仏教が伝播し、お寺で呪符が配られるようになった説など様々な説があります。具体的に「お守り」的な捉え方がされるようになったのは、平安時代の陰陽師の頃ともいわれています。また、初詣などで神社内の授与所にある上記のようなお守りは、「ひとつ、ふたつ…」ではなく、「1体(たい)、2体…」と数えることから、ご神像としての存在であったことがうかがえます。
「お守り」に込める願い
人生の中で起きる出来事は、自らの意思や行動で引き起こしたこともあれば、天災や不慮の事故など、思いもかけず突然やってくるものまで多種多様です。だからこそ、心を温かく包み込む「お守り」が人々の傍に寄り添い続けているのかもしれません。現代でも、「健康」「縁結び」「厄除け」「交通安全」「学業」「金運」「五穀豊穣」「商売繁盛」「仕事運」「家内安全」「安産祈願」など、人は多くの事を願い、自身の力や運だけでは予測できない未来を少しでも前向きに捉えることができるように、御札や勾玉、破魔矢、アクセサリーなど、様々な形のお守りを近くに置いたり、持ち歩いたりしています。
「勾玉」の魅力
日本人の心を見守るお守りの中でも、幅広い年代に受け入れられている種類のひとつに「勾玉(まがたま)」があります。Googleで「勾玉」と検索してみると、約756万件の結果が表示されるほど、話題に尽きないトピックのようです。「曲玉」とも表記され、先史・古代の日本における装身具の一つでもあります。祭祀にも用いられたと言われていますが、詳細は分かっていません。「勾玉」という表現が初めて記載されたのは「記紀」(「古事記」と「日本書紀」の総称)で、「古事記」には「曲玉」、「日本書紀」には「勾玉」の表記が見られます。語源は「曲っている玉」から来ているという説が有力とされています。この独特の形の由来についても、「動物の牙で作った」「胎児の形を模した」「魂の形を象った」など、多くの説があり、正確には解明されていないようです(ウィキペディア「勾玉」より)。どのような由来で生み出されたのか正確な情報がないからこそ、人々の努力だけでは及ばない領域への願いを成就させるために、勾玉の持つ神秘的な力が現代も人々を惹きつけているのかもしれません。
古式有機原酒「なゝこ 」と勾玉
5月25日(月)に発売される2020年度版 古式有機原酒「なゝこ 」には、ノベルティとして、檜で造られた勾玉が同梱されています。先日、5月14日(木)に、その香り高い檜で象った勾玉を、「焼酎神社」として昨年話題になった鹿児島県南さつま市にある竹屋(たかや)神社にてお祓いをしていただきました(パワースポットとしても知られる竹屋神社については、以前こちらの蔵だよりでも紹介しています)。
100回目を迎えた今回の蔵だよりは、古来より日本人に寄り添ってきた「お守り」について書かせていただきました。「お守り」に込める願いは人によってさまざまです。「人事を尽くして天命を待つ」ということわざがあります。自分自身が全力で努力をしたら、事の成否は人知を超えたところにあるので、その後は静かに天命に任せるというものですが、少しでも「天命」を手繰り寄せるために傍で見守ってくれることを神様(お守り)に臨むのは人の常なのかもしれません。
INFORMATION
2020年度版 古式有機原酒「なゝこ 」について
※販売を終了しております。