明治元年創業からの伝統製法にこだわり、焼酎造りを行っている伝兵衛蔵では、2022年の8月に木桶蒸留器を新しいものへと交換しました。使用を重ねることで生じる木材の痩せ、箍(たが)の緩みなどによる漏れや、木材の腐食への対応として「5年に1回」の周期で更新を行っています。
焼酎造りに欠かせない蒸留の工程において、木桶蒸留器を使った蒸留は江戸時代から明治初期頃まで主流だった方法です。ですが現在では鹿児島県内に112蔵ある蔵元のなかでも、木桶蒸留器は一部でしか使用されていない希少な蒸留器となっています。
要因はいくつかあるのですが、熱伝導率(蒸留効率)が高く、管理などの面からも手間のかからないステンレス製の蒸留器が主流になったこと。さらに、『木樽蒸留器』を作れる職人は、現在日本で津留安郎さん(三代目)お一人しかいないことなどがあげられます。
日本に一人しかいない造り手の技術
この木桶蒸留器には設計図がありません。釘も接着剤も使わず、全て津留さんが手作業で仕上げます。材料は樹齢80年以上で直径60cm以上のメアサ杉の木と樽の箍(たが)に使う竹のみ。杉の木の中でも、成長が遅く板の目がピンク色をしているメアサ杉は、生産量が年々少なくなり入手が難しい貴重な木材です。
この木桶の製作ですが、まず4枚の板を繋ぎ合わせ円型の底板を造るところから始まります。続いてこの底板を一周するように32~33枚程度の板を使って胴板と呼ばれる側面を整えていきます。専用の測りを板に当てながら角度を調整し、一枚一枚削っていく作業ですが、木桶は上下の端と中央部では厚みが違うため、角度も微妙に異なります。板を隙間なくぴったりと合わせるため、もっとも神経を使う作業と津留さんは言います。さらにこの木桶の周囲を、夏場~1月に刈り取った竹を用いた箍(たが)を木槌で打ち、締め付け組み立ていくのです。
職人の「手間」と「技」をかけた分だけ旨くなる
これだけ手間はかかりますが、木桶蒸留の特徴は、木の香りが焼酎に移って独特の香りや味わいが出てくる点にあります。ステンレス製に比べてゆっくりと熱が発散される上に、木桶の隙間からガスやアルコールが少しずつ抜けるため、柔らかくて上品な口当たりに仕上がります。
伝兵衛蔵の代表銘柄である本格芋焼酎「伝」は、こちらの木桶蒸留を用いた伝統製法にこだわって造った逸品。職人の技、杜氏の技を思い浮かべながら、ぜひ味わってみてください。
ちなみに写真に写っている木桶蒸留器は防腐・防虫対策のための柿渋を塗る前のもの。納品時はこちらのように無垢のまま納品されます。
Information
■本格芋焼酎「伝」
内容量:720ml
種類:本格芋焼酎
原材料名:鹿児島県産さつま芋/米麹(国産米)
麹:黄麹
アルコール分:25%