梅雨も明けて本格的な夏。焼酎、ビール、そして清酒が美味しい季節の到来です。鹿児島県いちき串木野市に位置する焼酎蔵「薩摩金山蔵」で、鹿児島県唯一の清酒蔵として「薩州正宗(さっしゅうまさむね)」が誕生したのが2012年のこと。今年も1月から仕込みが始まり、例年以上にメディアに取り上げられ、鹿児島県にも清酒を造る蔵があることを知っていただける機会となりました。今回の蔵だよりは、6年前に長野県の清酒蔵にて修行し、現地の杜氏から多くを学んだ、鹿児島県唯一の清酒の杜氏、東條健太さんに7年目に賭ける想いについてお話を聞いてみました。
(一枚一枚丁寧に想いを込めてラベルを貼ってお届けしています)
「本格焼酎の進化」のために清酒造りの修行旅へ
入社以来、研究職として焼酎と向き合う日々だった東條さんが、単身長野県の清酒蔵での修行に身を投じたのは、2010年の秋。本格焼酎が日本の國酒となるには、ルーツを同じくする清酒を学び知ることは必要不可欠であることから、薩摩金山蔵で清酒を造ることになったのです。当時の清酒製造に関する知識はゼロ。イチから身に付けることばかりだった東條さんは、それまで清酒はほとんど口にしたことがなく、清酒造りから学ぶことのすべてが「なるほど!そうだったのか!」と、気付きの連続だったとのこと。例えば、米。焼酎で使用している米と清酒で使う米は全く違い、また黄麹菌という酸を生成しない麹菌を使用することから、もろみが腐造(ふぞう:もろみが腐敗すること)しないように冬場の寒い時期にしか造れないことを実感しました。
先輩杜氏から学んだ清酒造りの姿勢
修行を終え、鹿児島に戻る前に先輩杜氏から、「度胸をもって製造しなさい」と言われた東條さん。学び終えたばかりの頃は、その言葉の真意まではわからず、鹿児島に戻り、清酒造りが始まりました。習ったことを教科書通りの手順で進めましたが、なかなか思い通りの結果が出ず、壁にぶち当たるたびに、先輩杜氏に電話で相談し、的確なアドバイスをもらい、再び作業に戻る、そんな日々でした。そして、アドバイスの最後には必ず「度胸を持って」と激励されました。何度も助言をもらい、試行錯誤を繰り返す中で、「度胸」の真意が少しずつ心で理解できるようになってきました。「清酒造りは、相手が生き物(微生物)であるうえに、気候・設備・水質なども異なるため、同じ作業をしても、数学のように同じ結果が出てくるわけではない。だからこそ、ひとつひとつの結果を深く考え過ぎず、自分自身が良いと思ったことを思いっきりやれ」という意味だったのではと気付いたのです。迷いを吹っ切った東條さんは、同じく生き物(微生物)と向き合う本格焼酎造りの経験を活かし、自信を持って、清酒造りの過程における様々な状況に、冷静に対応できるようになりました。そして、2012年、鹿児島県で40年振りとなる、清酒「薩州正宗」が誕生したのです。
成長を遂げた7年目の杜氏は、さらなる高みへ
(もろみの入った発酵タンクをかき混ぜる東條さん)
最終工程である上槽(もろみを搾る作業)した後に清酒の味を見る時に、”確かな手応え”を感じることができるようになったと、清酒造り7年目を迎えた東條さんは語っています。また、清酒を年間通して造る中で、もろみが発酵している時、良い出来であることを感じることが増えたそうです。修行から戻り、造り始めた頃は、発酵過程で、良い時と悪い時があり、その原因をつかむまでに時間を要したが、一緒に働く仲間たちの協力もあって今では安定した自信のある酒質に仕上げることができるようになりました。これまでに、米のうまみを生かした濃厚な味わいの「純米酒」、フレッシュで軽やかな酒質の「純米吟醸酒」を生み出し、2017年度は例年以上に売れ行きも好調。清酒造りと本格焼酎造りのノウハウを兼ね備えた、36歳の薩摩の熱き杜氏。今年は「大吟醸」に挑戦です。どっしりと”度胸”を据えて、今日も清酒造りに勤しんでいます。すべては、本格焼酎を真の國酒にする進化のために。
関連ブログ:40年ぶりに蘇る鹿児島の奇跡
Information
薩州正宗 純米酒 〉詳しくはコチラ
薩州正宗 純米吟醸酒 〉詳しくはコチラ
(薩摩金山蔵売店限定の「薩州正宗」の生酒も冷やしてお待ちおります)
(売店横にあるKINZAN@CAFEでは、夏の暑さを吹き飛ばす「塩麹ジェラート」も人気です)
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